黒には、高級、上品、シックといったイメージがあります、やはり昔の人々も黒く、艶やかに美しい長い髪は女の命に値するというほど大事にお手入れされていました。垂髪にはツバキ油かくるみ油を少量つけてから、梳櫛(すきぐし)でたんねんに梳きます。
結髪には、衣紋を抜いて着るようになり大きく開いた襟足を美しく見せるために、生え際の毛を抜いたり剃ったりと形を整えたのちに襟白粉を塗りました。これは、襟首が細く見えるので、舞妓さんなどが今でもその特徴的な襟化粧をしています。
近代に入り日本人の黒髪に対する憧れは変化し、欧米文化との交流などによって服装や生活様式が洋風化し、脱色や染毛によってしだいに茶髪など、それぞれのファッションや趣味趣向に合わせたり、肌の色に合わせたりという感覚でファッションの一部として楽しむようになりました。
眉も、時代によって様々な形が流行しました、時代や身分、階層、既婚・未婚などによってその眉の形で階級表示がされていました、それは非常にバリエーションに富んでいるものです。
現代は、染毛同様に眉も髪の色に合わせて染めたり、アイブロウを使い描いたりしていますが、やはり流行の形が時代によって変化しています。
そして、黒化粧の代表といったら『お歯黒』の文化です。平安時代には男女ともに上流階級のみ行われていた風習ですが、しだいに男性はやめ、女性に一般化されるようになったようです。鎌倉・室町時代になると上流武士と女性のみのものとなりました、8~9才になると初めてお歯黒の儀式をしました。江戸時代に入ると、男は公家だけを残して女性専用、それも未婚・既婚の区別となりました。婚約、結婚の際に親類縁者にお歯黒道具一式を貰い始めてお歯黒をつけます。未婚者でも20歳前後になると歯を染めた人もいたようです。
明治~昭和になり、その風習はだんだんとなくなり、今では見かけることはほぼありません。やはり、黒には不変で貞操をあらわしていたようで、時代の流れとともに美意識や生活が変わり、すべてが多彩になりました。
今では、婚礼・式典などの際に、黒の着物や紅白幕などといった形ですが、現代にも『赤・白・黒』の日本文化と言える世界観が残っているのでした。